
Kalcha's Papier colle avec le texte

地図と記号 第8部
酔郷にて しょの第一夜
そこは地図に無い店だった 大通りからひとつ小径を入った突き当たりに静かに佇んでいた いつも閉まっていたので気づかなかったのだろう 表には店が開くのは25時からと書いてあった まさかそんなことはと 嵆は思い切ってドアを開けてみると薄暗い店内にはマスターらしき歳のよくわからない人物がいた 彼は最上の微笑みで嵆を出迎えてこう言った
「いらっしゃい 奥のテーブルは先客があるのでカウンターへどうぞ」
促されて嵆はそのまま止まり木に腰をかける たしかに奥の方には何人かの男女の先客がいてトランプのようなものをしていた
「何を召し上がりますか」
と聞くそのマスターの目は深い深い水の底のような色をしていて もう既に嵆が頼むであろう注文を知っているかのようだった カウンターの向こうの棚には色んな種類の酒が並んでいる たいていのものは知っているはずの嵆だが 初めて見る酒の瓶も多かった
「いつもはウィスキーを飲むんですが 今日は初めてなので何かお勧めのカクテルをひとつお願いします」
するとマスターは我が意を得たりとばかりいったん奥に引っ込んで何かを早速作ってきた シェイクを振る音は聞こえなかった 出てきたカクテルは血の色をしていた
「ひょっとしてネグローニですね これでは倉橋由美子の小説と同じ出だしではありませんか」
ところがマスターは少しばかりかぶりをふるともうひとつのグラスも差し出した 今度は青いカクテルがそこにあった
「これが何を意味するか 今夜あなたがお見えになったのはそれを確かめたかったのでしょう どちらをお飲みになりますか」
マトリクスのようなうす笑いを浮かべるマスターのその言葉にも驚いたが そのとき同時に店の奥にいたグループの中から纏わりつくような視線を嵆は感じた
「わたしには二人の子供がいましてね」
とマスターは語り始めた
「レドルとアボルバスとゆうんですが これが全く正反対の性格で仲は悪い そこでこれを作ったのです」
次に出されたカクテルは二つの色をしていた
「私もそれを頂こうかしら」
嵆がその声に振り向くと 奥のテーブルからずっと嵆を見つめていたらしい一人の女性が立っていた
思わずカクテルを飲み干した嵆は軽い目眩を起こし気がつくとどこかで見覚えのある場所にいた
周りは星月夜
そして目の前にその彼女が立っている
面影に花の姿を先立てて幾重越え来ぬ嶺の月虹
花びらを重ねたような衣装に身を包んだその女性はそう言ったわけではないが 嵆はまるで当然のことのようにその女性を抱きしめて唇を重ねた
その先はどうなったのか 覚えていないまま
急に頭がはっきりしたとき 嵆の前にはまたマスターの微笑む顔があった
「おかえりなさい」
開いている店のドアから眺めると先程までの星月夜はもう見えず 外の道は雨が降り始めていた
「この季節にこんな雨は初めてですね」
マスターはもう店じまいだとゆう仕種をしてグラスを片付け始めた
奥のテーブルにはもう誰もいなかった


酔郷 しょの1
「ハカセ 昨夜何かありましたか」
「そんなむかしのことはおぼえてないよ」
「かしーなー なんぞまた細工を」
「むいしきとむいしきみたいなもんかな
ゆめのうちうつろふはなにかぜふけば
しづごころなきあきのうたたね
酔郷にて しょの第二夜
それ以来そのバーにあしげく通うことになった嵆だが マスターの名前は蒲さんだとゆうことを知った なるほどと思った それなら店の名前は『聊斎志異』でも良いかも知れない 聊齋とは書斎のことでもあり 異を志すマスターとは話が妙に合うからだ
「カクテルはもう面倒なのであまり作らないんですが 皆さん知りませんし でもたまにリクエストがあるとかえってうれしいもんです」
「となると今夜は果物や植物のカクテルとか」
「リキュール類は香りや色づけに植物を使いますね 昨日のカンパリやキュラソーもそうですよ」
「トッカータとゆうカクテルはあるんですか」
「それはたぶんグラスの名前では? あとクレッシェンドとかダルセーニョとかゆう名前も聞いたこと無いです 小説の中の話ですね それより果物なら今日のメニューはこれでしょう 『Yang kuei fei』 そろそろお越しになるかと思いますよ」
マスターの言葉通り そこへ昨日の女性がひとりで入ってきた
マスターの蒲さんは二人分のカクテルを用意してくれた
「ところでこのお店はどこにも看板が無いんですけど なんてゆう名前なのですか」
「名前なんか何でも良いのですよ あなたの好きな名前にすれば良い 聊斎志異でもね」
「だったら B&B とゆうのはどうかしら Fire & Stone でもいいけど」
たぶんそれは彼女が知っているどこか異国に実在するバーの名前なのだろう 嵆はこのカクテルを二人で飲めばきっとその異国に一緒に行けるのではないかと思った
そこはきっと

酔郷 しょの2
「ハカセ 仕掛けわかた 夜の部と昼の部になっているのですね」
「ヌーベルバーグのジャンプカットみたいなもん考えたのぢゃが」
「ベルモンド追悼と昨日のセリフもボギーですかね で二本立て」
「でもない たまたまそうなったんで本来のテーマはちゃうのだ」
「手のこんだことに拘るのはハリボガトをポルベルモするような」
「でもない 舞台は中国でBGMも古琴だし異国の話も出てくる」
「いつ仕事してるのかとかいつ寝てるのかとか思われてませんか」
「でもない そこは難しい所で自動書記では出来ないところかな」
「最近携帯での編集やりにくなってます 昼の部はいいですけど」
「でもない でもない でもない でもないのよ ぐわっはっは
酔郷にて しょの第三夜
その異国とはどこだろう
今日もバー『聊斎』のカウンターに腰掛けて嵆は一人で考えていた
するとまた見透かしたようにマスターの蒲さんが話しかけてきた
「何を考えているのですか そうゆうときはこれですかね ムーンライトかムーンリバーでどうでしょう」
「ぼくはジンが苦手なのでバーボンベースの方にします」
出されたムーンリバーは月のような黄色ではなかったが よく見ると底の方に砂が溜まっているようで さらに目を凝らしてみたら難破船のようなものが沈んでいた
・
空港からは比較的近いけれどフェリーの船着き場ホルトストリートワーフまではシャトルバスしかなく 接続があるのは朝の10時の便だけである さすがに夜は無理だなと思っていると
・
嵆はグラスの底の難破船を掬おうとしたがそれはするりと逃げて人の顔に変わった 振り向くとその顔の主が つまり彼女が立っていた
「ぼくがなにか考えると目の前に現れてくれるんですね」
「そうかしら でもそのフェリーの行き先まではわからないでしょ」
フェリーの行き先? そうゆえばあれは何だったのだろう マスターのカクテルを飲むといつもどこか知らないところで目をさます
そうゆえば嵆は彼女の名前もまだ知らないのだった いや忘れたのだろうか
「わたしのなまえ
なにがいいとおもう?
ならむかしのなまえがいいわね
あのときはきかれなかったから
でもあなたはしっていたはずよ
なぜなら
それはあなたがずっとさがしているなまえだから
以下次回



酔郷 しょの3
「ハカセ 『聊齋志異』についておせかしてくりさい」
「あーこれは杉浦茂の漫画で上中と出てるが下はまだ未完だな」
「ちゃいますホンコの方で 今週はスピンオフでしょ」
「わかたわかた オリジナルは中国は清代の短編小説で500篇くらいあるらしい 作者は蒲松齢(1640年-1715年)である 怪異文学の最高峰とゆわれボルヘスも絶賛したちう 名作だな」
「ホラー苦手ですけど 映画化とかされてないのかな」
「そら中国のことやからいくつもあるが良いのは少ない 西遊記や紅楼夢みたいにやりゃいいのに とオモタらチャイニーズゴーストストーリは香港映画だが最近リメイクもされてる」
「中国映画は面白いね こないだも陰陽師観てました」
「とにかくスケールがはんぱやない モブシーンやワイヤアクションなどすごリヤル 見てくれだけでなく人間がちゃんといごいているところがえらい おまけにヒロインがかえらし」
「ハカセはこれをいったいどないネタにするんですか」
「知らん それに元ネタはモシトツ絡めてあるのだぞ 時空の表現方法についてはちょっと事情があってここは本意ではないがいま研究中である 鏡がうまく使えないからとゆうこと
酔郷にて しょの第四夜
その日はいつもより店は賑わっていた とゆうのはマスターの蒲さんのお誕生日だったからである
もう仙人になるくらい生きてますからね
といつもの笑顔を見せながら ちょっと考え込む そして
たぶん嵆さんにはこの色はタブーなんでしょうけれど
と新しいカクテルを作ってきた
これはアクア・マリーナでしょうか
似ていますが少し違います その名前はヒントになりますね アクア・マリーナだとペパーミントを使いますが この細かいレシピはヒミツです 先日植物の話がありましたから考えていたのです
植物とゆうか何かの樹液かな
と 嵆には思い当たる節があった たぶんメラレウカではないか 確かにマスターが言うように彼に緑色はタブーだけれど エキスでありエッセンスでもあると聞いていたからだ
客達はみんな長居はせず マスターの誕生日祝いをして一二杯だけ飲むと 次々に入れ替わっていった
そのうち先程貰ったカクテルが効いてきたのか その客達の姿がみな異形のものに見えてきた
ここは「カンティーナ」か それとも「常世」かも知れないと嵆は思った
酔郷 しょの4
「ハカセ 今日は嵆康についておせて」
「うむ 嵆 康(けい こう)は三国時代の文人で 竹林の七賢人のひとり 妻は曹操のひ孫である しかし名利を諦め 琴を弾き詩を詠い 老荘に至ったシトやね 得意な曲は『広陵散』だ 刑死するが最後にそれを演奏したとゆう」
「嵆はけいと読むのね とゆうことは」
「まーご想像に任すが 今週の昼の部は夜の部の解説版とゆうことではないので まだまだ趣向はあるのだ」
「趣向とゆうか 酒肴ちゃいますのん」
「今回は自動書記やってるわけではないからな 説明を要するものはゲージツではないと誰かがゆうとったが そら引き出しが少ないかその容量が狭いだけとちゃうけ」
酔郷にて しょの第五夜
何を読んでいるのですか
満月にはまだ遠い三日月の夜 嵆がいつものバーカウンターで読書していると マスターの蒲さんが覗き込んできた
『聊斎志異』です 岩波文庫もあるんですけど杉浦茂の漫画版の方が読みやすいから
と 嵆は苦笑いした バーの中は薄暗いので字が読みにくいとゆうこともあったのだ
下巻が出てないので収録されなかったか画かれていないのかと思いますが『書癡』とゆう一遍をご存じでしょうか 本の中の栞から美女が出てくるとゆうお話し
蒲さんは杉浦茂ならよく知っているとばかり こうも付け加えた
今日のカクテルはこれにしましょう ホワイトレディ
ジンは苦手とゆうことでしたが コイントローと檸檬ジュースで飲みやすいですよ
それは「顔如玉」ですね
富家不用買良田 書中自有千鍾粟
安居不用架高堂 書中自有黄金屋
娶妻莫恨無良媒 書中有女顏如玉
出門莫恨無人随 書中車馬多如簇
男兒欲遂平生志 五經勸向窗前讀
>ある日、(郎玉柱は)『漢書』の第八巻を読んでいて、本のなかに、美女のかたちに切り抜いた「しおり」のようなものを見つけた。よく見ると、かおかたちが生きているようだったので、ひっくり返して見ていると、突然、実物大の美女に変身した。美女は「顔如玉」と名乗り、「あなたとは前からの知己です」と言ったところを見ると、古本の精かなにかのようだ。
・
今日も彼女の姿は見えないようです その本の中にいるかも知れませんね
ああ それなら
と
顔如玉とは「書中に女あり、かんばせ玉のごとし」
「かんばせ」とは「顔馳せ(かおばせ)」からの音変化で 顔の様子 →花の顔(かんばせ)
玉
と嵆は呟いてその本の一節を思い出した
>花のような顔はむしろ玉にも似て白々と冴えて、黒々と泳ぐ大きな瞳だけが怪しく燃えていた
ホワイトレディはジンベースのカクテルだがジンは松ヤニだろう もともとはジンではなくてペパーミントリキュールを使っていたらしい イエーガーマイスターならどうか でもそれでは白色にならないぞ それよりコアントローはオレンジピールだし レモンも入れるから 結局白くなったのだろうか
白? なぜ白
酔郷 しょの5
「ハカセ 顔如玉が出たので玉について調べました 古琴玉」
「ラクタ君 おまい 無理にネタにしようとオモてないかい」
「いいじゃないですか 玉は中国神話にいくつも出てきます」
「せやな 『紅楼夢』でも賈宝玉と林黛玉のせつない話だな」
「薛宝釵も出てきますがどろどろした三角関係じゃないです」
「三国志の『武』水滸伝の『侠』に対して『情』の文学やで」
「道教・仏教の思想もあります まぼろしの境界・太虚幻境」
「通霊玉てのもあるしな そこはまたいづれ取り上げるかの」
「玉は玉子にも通じますか 龍とかに玉子の話があったです」
「龍と蛇は切り離せない関係である 龍は卵生にして思抱す」
「護法の話ですか しかし引き出しは色々あるもんですねー」
「11月まで続ければわかるような気もするが もう週末だ」
「ハカセ延長お願いしますどうせ十五夜まではやるんでしょ」
「ぎくっ
酔郷にて しょの第六夜
マスター 赤 青 黄 緑 白ときたところで
黒いカクテルとゆうのはあるのですか
黒ビールを使ったトロイの木馬なんてのがあります あとはコーヒーやカカオとかカシスのリキュールを使えばできますね
ブラックラグーンはちょっとあれなので それよりまずはこれにしましょう ブラックレイン
この黒の色調はブラックサンブーカとゆうリキュールで薬草みたいなもの エルダー(スイカズラ※ニワトコ)やリコリス(甘草)なども加えます
カクテルが出来たとき 入り口の珠帘をもちゃげてひとりの男が入ってきた 背は高くがっしりとはしているが顔は童顔なので子供のようにも見えた そしてその両眼はまさに 鏡 のようであった
私は乙と申します ご一緒してよろしいですか
ああどうぞ いまカクテルを楽しんでいるところで
何でもいけますので 私も何かお薦めをひとつ
こりゃなんだか ウワバミみたいにお強そうですね
でわ とマスターの蒲さんが作ったのは 昇天 とゆうカクテル
これはスピリタスとラッテ・リ・ソッチラでどちらも度数が世界一とゆわれているくらいだからきついですよ まさに(Go To Heaven)
スピリタスはポーランドの酒
ポーランドとゆえばあれかな
嵆は独りごちた
乙さん 失礼だがあなたの眼は何かこう
蟒蛇 とゆうよりはもっと不思議な・・
おや わかりましたか
実は私 乙天護法とゆう龍でございます
そのやりとりをマスターの蒲さんは黙って聞いていたので 嵆は尋ねた
何か凄いお店なってきましたね
でわマスターは一体なんですか
私?今日のカクテルは黒なので
玄武または玄冥とゆうことでは
だったらわたしは朱雀の祝融よ
と そこへ彼女が突然現れた
わーびっくりさせないでください
じゃあぼくは何になるんですかね
白虎はイヤだな寅卯は苦手なんで
では蓐収とゆうことでは
いまはもう秋ですからね
嵆さんには良い季節かな
何かゲームでもするつもりかしら
わたしもいっぱいいただきたいわ
でも黒いカクテルはいや 赤よ赤
さすがは朱雀さんですね
夏の祝融とでもゆうかな
どこか南の湖沼にご縁ないですか
それをまた先程からじっとみていた乙だが
自らの頭の博山に尺水を集めたかと思うと
にわかにその鏡のような2つの眼が光った
嵆が気がついたとき
乙さんと彼女の二人の姿は消えていた
そして
マスターの姿もなかった
以下次週?
酔郷譚 しょのXX 第二部予告
そろそろ夜が明ける
嵆は一人取り残されていた 時の中
ウラングラスは空になっていたが
時空はまだ閉じてはいなかった
hourglass の砂の中に難破船が埋もれていた
・
まじめに考えるに値しないとゆう些細な問題もあるが そうゆう問題こそ詳しく調べ始めるとわけがわからなくなるものである
時間とは何か とゆう問題がこの種のものに属する
時間の流れとは何か 時間とは常に同じ速さで進むのか それは川の流れのようなものだろうか それとも今と呼ばれる瞬間が現在から未来へ移ろいゆくものなのだろうか 時間の流れが止まったり逆転したりすることは考えられるのだろうか 時間には始まりがあったのだろうか 時間には終わりがあるのだろうか 時間とは出来事が続くものなのだろうか それとも独立した存在なのだろうか
時計で測れるものとはどうゆうことなのだろうか
アウグスティヌスに始まり ガリレオやアインシュタインやホーキングは何を思索してきたのだろうか (後略)
ー リチャード・モリス 『時間の矢』
・
龍と蛇のウロボロス 辰巳
対極は戌亥
今年の秋分の日は23日
前回の辰年は22日だった
翌巳年2013年から23日が多く続いたが
2016年の申年は22日であった
次の辰年2024年にまた22日となる
春分の日の方はほぼ同じ割合で20日か21日
春分と秋分の日は昼と夜の長さが同じである日とゆうことから年によって設定日は変わる 万年カレンダーには記載されないことがある
二十四節気の陰陽の中分なれど 厳密には夜の方が少しだけ短い 理由は大気差 太陽の視直径 日周視差などによるずれである
・
「ハカセ 辰巳と戌亥についてなにか」
「巽さんと乾さんとゆうのはあるが それ以外のペアは一字にはできない 子丑さんとか寅卯さんとかな これはなにかあるのではないか 卵の三合とは少し違う 辰巳は月のエキスで 戌亥は土(地)のエキス 木金火水が東西南北の四方だとすれば月と土は天地であり縦軸のことだから これが四方を時間軸で回転させているのだとゆえる 特に辰巳については龍と蛇で奥は深い マー来週の課題だな」
「第二部があるのですね フツー続編はコケますけど」
「いやBTTFのような例もある 三部作とゆうのは色んな意味があるからな 次のマトリックスは4ではなくて1.2なのではないかと思っておこう とりま一段落したので昼と夜を固定する」
酔郷譚 第二部 予告2
第一部のキーワードは 玉 であった
第二部のキーワードは 鏡 としよう
しかし嵆はそのためにまず別のキューを探した
・
中国人民大学商学院 星爺准教授は 西遊記を研究し はじまりのはじまりを描いたが 第二部は少し別のものになっていた
以前 続編を探していたときにはぱちもんしか見つけられなかった しかし今回偶然発見 キャストがほぼ入れ替わっていて またぱちもんかと思ってわからなかったのである
これが前作ほどではないけれどまずまずの内容で さらに3は無いのかと探して 三蔵法師ー玄奘の旅路を見つける こちらはまた真面目なドキュメンタリーぽいものだった
そこでこれらにヒントを得て
別のキューとして 砂 を使ってみることにした
それは木の病を治すためのものと令洋先生に聞いたことがあったからだ
舞台は塔克拉瑪干へ飛ぶ
・
・
夜よ ぼくの夜よ
この長い間
ぼくはそれを捜していた
水の夢を見る
砂漠の上にひとり残された
苦い目覚め
掌からこぼれ落ちる愛の砂
火の夢を見る
二つの夢は交じることはなく
炎の中に
乗馬する君はぼくの欲望
砂漠のバラ
ヴェールに包まれた秘密の約束
砂漠の花
ぼくを苦しめる甘い香り
君は振り返る
この夢の全ての論理の上で
水と火が戯れて
これ以上なにもないことに気づく
水と火の夢を見る
砂漠の上に残された
苦い目覚め
掌からこぼれ落ちる愛の砂
水と火の夢を見る
見上げる先には何もない
そしてまたぼくは目をとじる
きっと今度は虹が出ているだろうと
酔郷譚 第二部 西遊妖艶伝しょの1
最初に 今回の登場人物はもちろん
玄奘 沙悟浄 猪八戒 孫悟空 そして白馬(玉龍!)であることはゆうまでもないのだが
彼等は何を求めて西への旅をしたかとゆうことだ
・
【序幕】タクラマカン砂漠の一角 さまよう猿田博士
平成元年(1989 年)9 月
タクラマカンとはウイグル語の「タッキリ(死)」「マカン(無限)」の合成語と言われ「死の世界」「永遠に生命が存在し得ない場所」のことである 北に天山山脈南に崑崙山脈と6000 ~ 7000m 級の大山脈に囲まれている 「さまよえる湖」として知られるロプノールは1928 年トルファンに滞在していた探検家ヘディンによる この「さまよえる湖」説というのは「1600 年あるいは1500 年など一定の周期で湖が渡り鳥のように南北に移動を繰り返すということ」であると解説されるがこれは誤解である またロプノール西岸にある楼蘭市はシルクロードの要衝として有名だが さらにその西に前漢の時代から烏孫とゆうところがあった この烏孫の烏は鳥ではなく烏である
ここにもう一人 塔克拉瑪干をさまようことになる人物が居た
https://www.youtube.com/watch?v=59R1_bMqv_c
5:55 segno
時間を遡る砂時計2
「ハカセ 小細工しましたね」
「ほほほ どうももう一人のメンバーをうまく表現できなくて 中国映画を片っ端から観たが これがまたそれぞれ味があってアジヤの曙 ひらけ鯵だ まぢめなものもありハチャメチャもある もともと荒唐無稽な話やけど 白骨夫人がロマンチックに描かれているのが二篇あり 途中は妖怪怪獣映画みたいなってる こりゃ月岡芳年だな 玄奘が女性とゆうのはよくある オーストラリア版では沙悟浄も女性で もう一人の つまり悟空をどうするかと色々考えて これも女性とすると他にもあるし よしながふみの大奥でもないからな ではいっそロボットかサイボーグにしたらとゆうと そんなパロディ小説が既にありアニメもある 周星馳の続編では紅孩児がタンクタンクローみたいなロボットだ ぼくには周星馳の最初の悟空役が池メンでないところがツボった 性格もひねくれているところが良い それなら星・沙悟浄 小松・猪八戒でツツイに悟空をやらすとゆうアイデヤもあるんだが話がつながらんわ 山下トリオのジャズ西遊記は取り寄せ中 まー花果山に500年ほど隠って次のサイコロでゾロ目が来るまで待ってみよう とてもハードルの高い宿題も頂いていることだしな」
https://www.youtube.com/watch?v=r7PEFjT_dVw
西遊妖艶伝しょの2
嵆はいつものバー「聊斎」が閉まったままなので途方にくれていた そんなとき バーで知り合った蒲さんの友人でかなり変わった風体の猪 悟能さんとゆう人にたまたま街中で出会った 猪さんはK大大学院の歴史文化学東洋史専修科・准教授だった
蒲さんのお店がずっとお休みで私も困ってるんです ところで嵆さん 今日は私の友人が面白いものを持って遊びに来ているので ちょっとウチの研究室まで見に来ませんか
こう誘われては断る理由もなく 嵆は同行する
こちらは学生時代からの友人で 中国人民大学の沙 和尚・准教授です 彼と私は必修課題よりもパタフィジックとパラロジックを研究していたとゆうゆわば変人仲間で 皆からはマッドサイエンチスト呼ばわりでした
なんとなくわかります まー私もそんなところがあるので
それで 面白いものとは?
はじめましての挨拶もそそこに いかにもくせのありそうな沙・准教授はさっそく小さな箱を開いて中身を取りだした
それは砂時計だった
特に何の変哲もない砂時計ですけど?
まーしばらく見ていて下さい
最初横に置いてあったのでわからなかったが 縦にして砂が落ち始めると不思議なことに気づいた いつまで経っても上の砂と下の砂の量が変わらない つまり砂が落ちきってしまうとゆうことがないのである
これはクロニアムとゆうものです 問題はこれがどこで発見されたかなのですが
https://www.youtube.com/watch?v=O1X9dRNE-6Y
砂時計はいつまで経ってもそのままだった
お腹すきませんか
もう見飽きたとゆわんばかりに猪さんがゆい 沙さんも
そうだそうだ 今から知り合いの中華料理店へ行って腹ごしらえをしながら詳しい話をしましょう 「山珍古」とゆうお店です
と賛同して三人は食事に出かけた
「山珍古」もまたまた変わった中華料理店(※実は台湾料理)で メニューには 「うーメン」や「チャーヘン」また「ビーノレ」などの変態活用が並んでいた
店主は呉さんとゆう三国志マニアのシトだった
嵆にはいったいどんなものなのかよくわからない「海えものうーメン」「土えものうーメン」などを二人が頼んでいると そこへ見覚えのある男が入ってきた
おや あなたは乙さんではないですか
お久しぶりです
先日マスターやあの彼女が消えてしまったときにあなたも突然行方がわからなくなりましたが 何かご存じですか
乙さんはそれには答えず 二人の持っている箱をその鏡のような眼でじっと見つめて
それは クロニアムですね
なぜそれがわかるんですか
ああ 前に私は乙天護法とゆう龍だと言いましたけど 実は龍神は私の親のことでして 本当の私は白馬なんです 名前はstormと言います 馬には馬にしかわからないものが見えるんですよ
馬はダメ とゆう大声がそのとき奥の席から聞こえた
店の奥の桟敷席に陣取っていたグループだった 何やら面白そうな連中なので聞いていると
今から本クラブを結成する 当会への入会資格は
馬はダメ
死んだ人はダメ
宇宙人はダメ
とする
と いちばん背の高い男が叫び
俺より背の高い奴もダメ
と追加した
となりの太った男は
俺より重い奴もダメとゆい
今日は来てないけどあいつが来たら 俺よりハンサムはダメとゆうだろうな
と笑った
11人もいた彼らは 俺たち抗菌族だとか 日米ソ防共協定(※まだ1960年代の話である)だとか はらこつとむ研究所のJRR3セシウム入り餅を喰おうだとか ザーメンも炒めて喰えなどと
わけのわからないネタで盛り上がる変態集団だった
・
これが 日本SF作家クラブの旗揚げ式だったことは のちにわかった 音頭を取ったのはSFマガジン初代編集長の福島正実である
背の高い男とは星新一(178cm)太った男は小松左京(自称85kg)
馬がダメとゆうのはメンバーの石川喬司が競馬ファンだったからで 身長制限ものちに田中光二(190cm)などの例外が認められる
この最初の11人とは石川喬司・小松左京・川村哲郎(筆名、中上守)・斎藤守弘・斎藤伯好・半村良・福島正実・星新一・森優・光瀬龍・矢野徹 この場に来ていなかった12番目の浮かれる男は筒井康隆である
入会拒否または退会した主な作家は
柴野拓美 山野浩一 荒巻義雄 眉村卓 平井和正など(理由は省略)
初期から手塚治虫や大友克洋らもメンバーに名を連ねたが
このクラブは後に様々な内紛を起こす(詳細は自習のこと)
台湾料理店「山珍古」の一室
嵆 猪 沙 そして乙こと白はしばらく黙って砂時計を見つめていた
これがどこで発見されたのかとゆうと・・
沙・准教授が口を開いたとき 白が口を挟んだ
タクラマカンでしょう 私は以前別の所でそれと同じものを見たことがあります
おお そうでしたか 実は今度その場所へもう一度行ってみようという企画があるんです 嵆さんと白さんもいっしょにどうですか
いいですよ でも もう一人メンバーが必要です
と白は答えた
もう一人いないのはツツイさんか
と 奥の方で誰かが叫んだ
西遊妖艶伝 しょの3
時間を遡る砂時計 Dal・Segno
「ハカセ いよいよ斉天大聖の登場ですね」
「ラクタ君か それがちょっと困ってンの」
「またなんぞ小細工を考えているのでしょ」
「・
・
・
西遊妖艶伝 しょの4
サプリメンタル
壓住孫悟空的是五指山還是五行山?
五山とはもともと南宋の寧宗がインドの5精舎10塔所(天竺五精舎)の故事に倣って径山・霊隠・天童・浄慈・育王の5寺を「五山」として保護を与えたのが由来と言われている
悟空が生まれた花果山は連雲港市街地の外れ某大学からバスで15分ほどのところにある 東勝神州の海のかなたに傲来(ごうらい)という国があって近くに大海をひかえていた その海中にひとつの名山があり花果山と呼ばれた この山こそは十州の祖脈三島の主峰であった
悟空が閉じ込められた五行山はダナンにある ぼくは近くまで行ったことがある 大理石で出来ている
もうひとつの五指山は中国海南省と台湾新竹県にもある どちらが正しいかは調査中
玉山は台湾にある 旧名を新高山とゆう 「ニイタカヤマノボレ」の暗号を解読できなかった某部隊はこの山に登り頂上で万歳三唱して帰ったとゆう 歴史は改竄されるギャグ周りの世界(このバワイPKDのミドルネームはKalchaである)
西遊記以降 中国では寺院の名称に地域を冠することで区別したが山の名前を使ったのが山号の始まりである 総本山 大本山などとゆう
須弥山となると実在ではない 「須弥」とは漢字による音訳で意訳は「妙高」
西遊妖艶伝 しょの5
<天界>
霊霄殿では 天界の支配者・玉帝が玉座にうんぞりかえって鼻くそをほぢりながらえっちなビデヨを観ていた
「あー今日は木曜か 昼から休診は良いんだが朝議があるんでうっとしのー リモートでやりゃいいのに なんでみな出て来ンのかねー」
そのとき轟音と共に宮殿が揺れた
「うーいいとこやったのに接続切れたやないけ どないなってんの おーい たれかある」
さっそく二人の神仙がやってきてひざまずいた
「おー千里眼君と順風耳君 どないしたん 台風でも来てんのけ」
「陛下 台風『チャンスー』はいま五島の西南西から東に進んでいますが このままでは明後日には蓬莱直撃コースでございます」
「ほな千里眼君 チミが眼の中にドライアイスでも捲いときなさい」
「陛下 サウンドがOFFになってるので通知がわかりません」
「順風耳君 んなこたわかっとるがな 心の耳で聞き 心の目で見るのぢゃ」
「陛下 申し上げます 花果山の頂きにあった石の卵が爆発して中から何か生まれたようです」
と白髪の太白金星が横から報告した
「なんてよ 絵入り餡でも出てきたのけ」
「ちゃいます サルです どうもただのサルではなさそうですが どないしますか」
「所詮サルやろ 愚かな人間よりさらに三本毛が少ないんちゃうん ほっときなさい それよりキララちゃんの続きが・・」
2<花果山>
石から生まれた石猿
さて西遊記は「白話」とゆわれる 白話とは口語体で書かれた物語のこと 西遊記の他にも 三国志 水滸伝 金瓶梅(※水滸伝のスピンオフ) 紅楼夢などがあり 中国四大奇書または三大奇書と呼ばれている
書かれたのは中国16世紀頃明代のことで 作者はいちおー呉承恩(1504年頃 - 1582年頃、江蘇省出身)とゆうことになっている そもそも西遊記の話は玄奘(三蔵法師)が629年から645年にわたって天竺まで取経の旅をする話であるから 物語になったのは約1000年後とゆうわけだ
この(書かれた)頃 日本では何があったかとゆうと 1582年は本能寺の変である またサルと呼ばれた秀吉が生まれたのは1537年(酉年)だが 一説ではその前年の申年生まれとゆうのももある 猿飛佐助はモデルがあるが実在かどうかはわからない 白土三平の『サスケ』は1961年の作 杉浦茂の『猿飛佐助』は1958年頃の作
他には 600年代とゆうと聖徳太子がお盛んだった頃で 彼は574年生まれの午年である 星は小王星(金星のマイナス) 没年は622年でこれも午年 つまり申の要素はないが 厩戸皇子つまり馬の要素はあるとゆうことだ
3<水簾洞>
花果山福地 水簾洞洞天
この水簾とゆうのは水のすだれのこと
石猿は花果山にある水簾洞の中でいつのまにか仲間の大王になっていたが なにか自分に相応しい名前が欲しく「美猴王」と名乗る 猴は中国語で猿のこと
彼はたまたま仲間の死を見て自分は不老不死になりたいと思い それを教えてくれる神仙を探すことにした
そして10年もかけて斜月三省堂の須菩提祖師を探し 手塚のオンデマ本なども作ることにした 須菩提祖師は「美猴王」は名前ではないと こう述べた
「性は『孫』法名を『悟空』としなさい 今日からおまいはわしの弟子ぢゃ」
4<霊台方寸山斜月三星洞>
とまー 祖師のもとで悟空は修行するのだが もともとお茶目でテキトーな悟空はキワメテ落ち着きがなくおこらえてばかりであった
「よくきけ 『天に月があれば水中には影がある』 つまり水に入って月の影を掬ったところで 天にある月を捉えることはできないのぢゃ」
「てこた説法聞いても無駄ちゅことですか いちおがんばって修行してるんれすけろも」
「弁解レスすなっ おまいの煩悩は読めておるわ この体験型愚か者め」
祖師は悟空を竹の棒で三回打ち 後に手を組んで無言のまま洞府の奥に隠れ 扉を硬く閉ざした
以下今夜三更で
5 夜の1
悟空は一人で居る祖師のところへ忍び込む
「こんな真夜中に何をしにきた」
「お師匠様は今日私を三度打ちました これは三更の頃に来い
後ろ手に奥に入って扉を閉じたのは これは裏門から見つからずに来い とゆうことではないかと」
「ほほう 謎を解いたわけだな でわ何が知りたいのぢゃ」
「不老不死の術 そして病を治す力です」
「そら簡単やないで まずは変化の術くらいにしときなはれ」
「それいいな おまけに空を飛ぶ術とかないすか」
「えーい ほたらこの筋斗雲をやろう」
悟空はたちまち夜中前には全て習得した
6 夜の2 三更
ところが悟空は調子に乗って術を見せびらかしたため 祖師の怒りを買い破門させられる羽目になるのだった
祖師の手には
西遊妖艶伝 しょの6
承前 祖師に破門されて水簾洞に帰った悟空は最初の敵と戦うことになる 自分が居ない間に牛耳っていた混世魔王である で 簡単にそれをいてもたあと その噂は花果山に拡がりその他の妖魔たちも皆帰順した
さらに長い年月が経ち悟空の所へ5体の妖魔が訪れる
それは鳳魔王 獅駝王 蛟魔王 犭禺(ぐう)狨王 そして牛魔王である 彼等は義兄弟となるのだが
悟空は牛魔王に「なんぞ良い得物はないかねぇ」と聞くと
「東海竜王の水晶宮にいっぱいあるぞ」とゆうことで早速行ってみた
2<水晶宮>
いっぱいあった 九股叉 方天戟などなど しかしどれも気に入らず
「もっと重いものはないか」と聞くと
「いっちゃん重たいのは『神珍鉄』ですが武器ではありません」
見てみると高さ二丈もある鉄柱だ その表面には『如意金箍棒 一万三千五百斤』と書いてある
「これおくれ しかしちょっと大きすぎるなー」と悟空が思った途端 それは意を察したかのようにしゅしゅしゅと小っさなった
かくして悟空は 七十二般の変化術 觔斗雲 如意金箍棒を得て スーパーカリフラジリスティックエクスペアリドーシャスとなる
必殺技もエスカレート
ディラックシー・ケイオスヘッド・スピン
グーゴルプレックス・スピニング不可説転ホールド
スーパーシューストリング・Dブレー・M字開脚大臀ドロップ
など
しかし
3 <研究室>
「嵆さん 嵆さん」
「えーと ここはどこ? わたしはダリ?」
「あのね あなたはさっきまで山珍古で飲んでた桂花陳酒でしこたまできゃがってましたから ここは猪先生の研究室ですよ 沙先生も居ます」
「うーん 長い夢だったな どうもまだ続きはあるらしいが」
「で ですね タクラマカン行きの話に戻しますけど もう一人のメンバーはそこで待っているようですし もう週末ですから早速行きましょう」
「行く って どやって?」
「お忘れですか 今は白とゆう馬ですけど もとは龍だとゆうことはご存じですよね 私が皆さんをお運びします storm は台風にも強いですが ペガサスではこの人数は乗せられません もちろん現在 中国系航空会社は一部を除きハックルベリ社を含め旅行会社経由では航空券の予約ができませんからね」
4<吐魯番市>
途中省略 四人が飛んだところは 新疆ウイグル自治区中部の吐魯番市中 高昌区とゆうところである
街中のなにやら胡散臭い路地を抜けると そこにひとつの店があった どうやらここは雀荘のようである
「你好,有人吗?」と白は呼びかける
「我在等待 我从很早的时候就在等你」
迎えたのは螞娘とゆう女将だった
「请到后面」
通された部屋には雀卓があり3人の人物が座っていた
「ようこそ 話は聞いています でもその前にまず一局お手合わせ願えませんかな 私は大力王と申します こちらは玉面 こちらは哪吒です」
「ええっ 誰が最初に」
「私がやりましょう 自信はありますよ」
猪先生が私に任せてとまず席に座ったが どうやら彼の狙いは下家の玉面とゆう美形の女性だったようだ
「七索 和 立直 宝牌ひとつ 二六」
いきなりさい先良く猪先生は上家の哪吒から和了した
下家の玉面がポンしているラス牌にもかかわらず また引っかけではあるが強引な手筋だった
猪先生の手筋を解説すると
ドラが二万なので孤立牌八万の次に一三三から三万を切っている 索子は一通の目を残しながら進めていたので結果としてこうなった リーチの引目はドラの二万である
半荘を終了して 一着・大力王 二着・猪先生 三着・哪吒で 玉面はラスの抜け番となったが
猪先生は「いやいや私もお伴して良いですかね」とゆい 玉面と別室へ消えた
ちょっと ご質問があったので場を再現して考えてみる
東風戦ではスピードが勝負なので流れに逆らうような打ち方は良くない 役作りは二の次でファン牌も北家でなければ一鳴きで良い 北家が鳴くと親のツモが進む 桜井さんもそうゆうだろう
阿佐田さんなら別だ 例えば一から八まで切って九で待つような人だからだ
そこで局面や点棒差によるがフツーにこの変則切りを推理すると
まず平和手ではなさそう
六七八の三色ならもっと早く四索を切るし五筒六筒もおかしい
そこでやはり索子の混一か 西家だから西が暗刻で一通がらみともゆえる 七索はワンチャンスだ
単純に最初の二枚の間4間と見て四七万でも良いが それでは役がわからない
そこでチャンタ系だがドラが二万なので三万切りは早々と頭に固定したともゆえるが ここは一二三の三色かとゆうことも考えられる
二筒はその時点でまだ一筒が三枚出ていないので一四筒もあるし 本命を嵌二万としても良い これは実際には引き目である
また七八九もあるが 七索はポンされているのでこれも少ない
あとは七対子だ
それが字牌でないなら引っ掛けと思えるが それでも七索の受けはない
よってこの牌はラス牌でも余っていたら出るのだ
ぼくはサンマはやりません 理由は役づくりが面白くないからです
ぼくの好きな役はチャンタ系三色がらみ
ですからもう一度この手で説明すると
配牌から
一三三万 223筒 あとは索子が多いとすれば
ドラの二万を考慮して
三万2筒から切り出すでしょう
その後 索子の伸びが良ければ混一に移行 せいぜい一通どまりなら 嵌二万だけ残すとゆう進め方ですね
但し 対子を潰すので七対子には回りにくい
大学時代のぼくの実戦でも似たようなことがあり
七万二万の切り出しで K山先輩におまえ三六万待ちやろと看破されたことだ
40年後の同窓会の席であの時の三六万待ちですが 実は引き目は嵌八万でして 先輩もリーチに迷わず切ってましたから残念^ ^
ああ それなら良い手だったね と
5<雀荘 対極軒>
第二局は猪先生と玉面そして哪吒も抜けたので
新しく金角と銀角とゆう者が入れ替わった
対面はあいかわらず大力王である
「沙先生 次出ますか」
「いや私は麻雀が出来ないので 嵆さんどうぞ」
とゆうことで次局は嵆が座った
しかし結果はまた一着が大力王 二着は金角 三着は銀角で 嵆はラスを引いてしまう
「いやぁ参りました」
「ふふふ あなたの本当の実力は知っていますよ もう一局如何」
そのとき 後で見ていた白がこう言った
「大力王さん あなたもそろそろ正体を見せてはどうですか? それにここにはもう一人私の知人が居るはずなのですけれど」
そして奥のドアが開いて入ってきたのは
それこそ 白が話をしていたもう一人のメンバーで 孫とゆう背の低い男だった なにやら落ち着かない様子でどうも風体の上がらない男である 一方で彼を連れて入ってきたのは背の高い凜々しい男で 名を灌江と告げた
「お お久しぶりです 白さん」と孫は言う
「それではまたメンバーを入れ替えましょう お二人ともどうぞ」
と大力王は薄笑いを浮かべて二人を促した
嵆の下家に灌江が悠然と座り 上家に孫が座った こちらはあいかわらずきょろきょろしている
対局は眈々と進み 対面同士に座った上家の孫と下家の灌江がお互いに放銃し合う形で 大力王と嵆はその打ち合いに参加できないままオーラスを迎えた 点数は皆ほぼ同じであった
「和 トップですね」と灌江が孫の打牌 白 を指さして唸った
大三元だった
そのとき 孫の躰がぶるぶる震えたかと思うと その小さかった体格が一挙に倍近くふくれあがった
「ははは やっと出ましたね 斉天大聖どの」
とゆう灌江もまばゆいばかりの鎧姿に変身した
「おおお おまいはやはり顕聖二郎真君であったか」
孫つまり 悟空が叫ぶと 後ろの白もこう言った
「あなたも招待を出しなさいよ 大力王さん」
すると彼の顔かたちもみるみるうちに変わり その頭からは二本の角が生えた
「牛魔王 見参」
6<雀荘 対極軒2>
かくして因縁の第三局が始まった
右図は 嵆が牛魔王に放銃したところ
オーラス ラス親の嵆は盛り返してトップを走っていた 但し二位の牛魔王とは満貫直撃で入れ替わってしまう点差だった
海底近く対面の牛魔王から不気味なリーチがかかる 嵆は降り気味ながら最後のツモでテンパイした 六筒を切れば良いがいかにも危険牌である さっきも七筒で放銃したところだ
「どのみちもうツモはない 現物を切れば済むことだ 和了しなくてもこのまま凌ぐだけで終わりなのだ」
しかしそれよりも嵆は 聴牌するとゆう自分の「さだめ」を試してみたかった 様々な考えがよぎったが 結局 嵆は牛魔王の現物六万をあまり考えずに切った
上家の悟空から「和! 満貫ですお師匠様 でもあなたがそのままトップです」
思わずはっとなった 悟空からもリーチがかかっていたことに嵆は気づいていなかったのである
「ふははは 六筒はあたりだが ただの平和だよ」
牛魔王が高笑いした
確かに他に牛魔王の現物はないが
一筒を切れば済む話であったのだ
まだツモがあれば七対にも回れる
万が一の国士無双も切れているし
筋からもそんな待ちはないからだ
7<雀荘 対極軒3>
「面白い勝負だったわ 今度は私とお相手していただけるかしら」
また新たな人物がそこへ入ってきた
それは バー「聊斎」から忽然と姿を消したあの女性だった
「真打ち登場ですな でわ私はこれで」と二郎真君は下がり 悟空はそのままに
「私も脇役に甘んじよう」と牛魔王が下家の席に着いた
対面に座ったその女性は 嵆にこう持ちかけた
透き通るその眼と顔はまるで白骨夫人であった
「どうせなら なにか賭けましょう あなたが勝ったら私を好きにして良い でも私が勝ったらあなたの魂を貰うわ それとも食べちゃうとかね」
最後の東風戦 一番勝負
なぜか 彼女はラスを引いた
牛魔王と悟空が張り合ったからである
嵆は 勝負には加われなかった
二番勝負
今度は嵆が先行していたのだが オーラスで見事にまくられてしまった
それは彼女の最後の海底前のリーチを読んで 二巡目に切っている三万から これはなかろうと自信を持って切った二万で直撃放銃してしまったからである
「もう一番」と嵆は頼んだが
「次はないわ 私の勝ちは私が決めるのよ 覚悟してね」
以下次回






酔郷譚 第三部 予告
「嵆さん寝てるの」
「あマスターじゃないですか どこ行ってたんですか」
「私じゃなく 嵆さんの魂がどっかへ行ってたのでは」
「えーそうかな てこたやっぱり夢オチなんですかね」
「でもないです ほらあなたのうしろにいらっしゃる」
「はいこんにちわ」
「ありゃ あなたもてっきりどっかへ行ったとばかり」
「いいえ ぢつわ私 ちょっと所用で出かけていたの」
「じゃとにかく みなさんおかえりなさいってことで」
「あそうだ もうひとりのあのシトはどうしたんだろ」
「ここに居ますよ」
と白さんも参加する でまたみんながめでたく揃って
お月見までまだ少し早いけど前祝いとでもしましょう
「これが定番です」
マスターが作ってくれたのは ブルームーン
レシピは ジンとバイオレット・リキュール
(正式名称だと パルフェタムールである)
「パルフェタムールってフランス語ですよね」
「そうです 英語ならパーフェクトラブです」
「ニオイスミレだな ただのスミレとは違う」
「飲む香水とでもゆいますか 媚薬にもなる」
「中秋の名月は必ずしも満月じゃないんです」
「十五夜は旧暦だから グレゴリオ暦は違う」
「もうすぐ満月ですけど まだ帰らないでね」
「あたしのこと? 別にかぐや姫じゃないわ」
「名前も未だに知らないあなたは一体誰かな」
「嫦娥奔月で如何 あの小説なら月の桂子ね」
「結局今回は中国神話の話になっちゃうのか」
「でもないですよ 牛魔王はミノタウロスだ」
「となると次はクレタ島まで行くんだろうか」
「ちなみにマスターの私は丑年です 件魔王」
「それはできすぎですかね となると彼女は」
「えーと あたしが女媧で嵆さんは伏羲とか」
「あのー 話が繋がりすぎてなんだか
・
「今日が十三夜なら十五夜にももう一度必ず来るのよ 片見月は良くないから」
「ええ もちろんです」
嵆は答えたが そもそもあの最初の星月夜は現実だったのだろうかと思っていた
そしてまだ鏡の回答すら得ていないとゆうのに
酔郷譚 第三部 月の砂漠しょの1
「マスター 今日は敬老の日でお休みですね」
「もともと15日が第三月曜日なったんでした」
「蒲さんは丑年ゆうてましたけどお幾つかな」
「さぁ 私は自分の歳は数えませんのでねぇ」
「ぢつは竹内宿禰の生まれ変わりなんてどう」
「そうかもね 嵆さんも厩戸皇子が前世とか」
「良いですね ただ午年じゃないから違うな」
「そう言えばあの人は確か巳年と言ってたな」
「ぼくも巳年です それで女媧と伏羲なのか」
「となるとイザナギイザナミまできますけど」
「古事記と日本書紀では解釈が違いますよね」
「おまけに出雲神話も実はなかったとなると
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの2
ふる濠に 月の砂漠を 過ぐるのみ
「今日はどうやらお見えにならないようですね」
「うーん 天女じゃないですからそうはいつも」
「彼女のお名前は 月の桂子さんで良いのヵな」
「桂とゆえば桂宗信とゆう浮世絵師がいますが」
「雨月物語なら京伝や馬琴も影響受けたとゆう」
「でも奇異の国の話は確か嵆さんの地元ですき」
「蛇性の婬の章なら もっと南の方の話しです」
「まーストーリーとしては狙いが少し違うのな」
「今回は幽霊の話にするつもりなんでしょうか」
「でもないんですよ ゆわばキャンベルのあれ」
「行って 帰ってくる とゆう成長物語ですか」
蒲さん 呉さん 白さん 猪さん 沙さん
嵆には
もう誰が喋っているのかわからなくなっていた
しかし
何が虚で何が実なのかはどうでもよかったのだ
いまは
時間だけは時間だけはいっぱいあるはずだから
と
昨日もそう思った
「虚に居て実を行ふべし」
「実に居て虚にあそぶことはかたし」
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの3
「さて みなさん今日はいよいよ満顔のお月見です」
「どこで観ますか 西安市の華清池とゆうのは如何」
「それは良いけど やるならまず仙遊寺で相談です」
「となると誰が誰の役をやるのかな キャスチング」
「白は名前通りで 王質夫がマスター 筆者は陳鴻」
「するとやはり嵆さんは玄宗皇帝で決まりでしょう」
「でも 玉環さんははたして来てくれるでしょうか
仙遊寺は長安(今の西安)郊外のお寺
近くには空海が修行した青龍時もある
迴頭下望人寰処 不見長安見塵霧
唯将旧物表深情 鈿合金釵寄将去
釵留一股合一扇 釵擘黄金合分鈿
但令心似金鈿堅 天上人間会相見
臨別殷勤重寄詞 詞中有誓両心知
七月七日長生殿 夜半無人私語時
在天願作比翼鳥 在地願為連理枝
天長地久有時尽 此恨綿綿無絶期
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの4
雲をみな払ひはてたる秋風に渦巻き染めし星月夜
嵆は少し疲れていたが 間に合わせなければならない大事なことがあった でもそれはなんとか形にすることができたので満足した 嵆が心地よい風を頬に感じてふと窓を見ると何か明るいものが覗いていた 明るいとゆう漢字は日と月と書くがこの日の部分は窓を表しているらしい 日と月はどちらが男性でどちらが女性なのだろう 天照大神も月読も男女は逆ともゆわれる それは裏と表ではなくもともともとはひとつだったのだ
嵆さん ちょっと最近痩せましたね
と蒲さんが聞いてきた
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの5
今夜もバー聊斎
嵆さん また寝てるんですか
ああ どうもこの頃ついつい眠たくなっちゃって
ところでマスター その後ろにある絵は何ですか
えーと マルスとアフロディーテみたいな
いいえ これはヘシオドスとミューズです
そっか 確かギュスタヴモローだね
そんで ヘシオドスとゆうと神統記
などと話しているところにひとりの青年が入ってきた 嵆には一瞬その男の背中に翼が生えているように見えた 彼もカウンターに座って蒲さんにこう言った
ズーム・カクテルってできますか
ズームって蜂の羽音のことですね
蜂蜜あるけど生クリームないから
テキーラ・ベースでも良いかな?
出てきたのは エルドラドとゆうカクテル
話していると 心優しいところがすごく伝わってくる穏やかな青年だった
ぢつわ私 嵆さんのことは最近よく存じ上げてまして と言うより まーこれは私の仕事のようなものなんですけど
と青年は切り出した
私は 比布野と申します
大脳生理学を研究しているのですが ある日突然 あ そこからは今ちょっと詳しく説明できないのですけど 嵆さんが最近よく眠くなるとゆうのは どうやら私が関係しているようなんです
私には双子の兄がいて 吒哪 とゆうのですが もし兄が来たら決して話をしないでください
それからもう一人 尾寧 とゆう弟もいまして 彼なら問題が起こったらなんとかしてくれるでしょう
あなたはできないのですか
いえ 私は原因であって結果じゃないんです
話をきくと
どうやら彼は研究中に何かの神が自分に憑依したらしい とゆうのだ
同時に双子の兄ともう一人の弟にも
それはひょっとしてテオゴニアですかな
物知りの蒲さんが言う
貴方達兄弟はたぶん夜の神ニュクスの血をひいたのでしょう
ニュクスは夫エレボスとの間にたくさんの子供達がいます
例えば
そこへ今度は3人の女性が入ってきた
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの6
承前 バー聊斎
やってきた三人は
魔女なんだろうか こう自己紹介した
パトラです
ペラです
ルナです
たはは ここはひょうたん島じゃないですよ で本当はあなたたちは誰なんですか
ここに兄が来ていたはずですけど
あ そういえばさっきの青年はどこへ行ったんだろう
あら その絵はヘシオドスね だったら私たちの名前もわかるでしょう クロトと ラケシスと アトロポスです 母の名前はニュクス 父の名前はゆいたくない それに他にも兄弟はいっぱいいるの さっきのヒュプノス兄さんとかオネイロス兄さんはいいけど 変なのもいっぱい居るのよ
やってきた三人は口々に勝手なことをゆいながらカウンターに陣取った
やっぱりモイライさんでしたか で何か飲みますか
お酒はテキトーで良いわ ネクタールとかエリクサーとか無いの? それより 嵆さんにちょっと用事があってね
はいなんでしょう
あなたの名前も問題があるの 嵆ってKでしょ その次はLよね
二二
「エルの物語」とゆうのをご存じかしら
あたしたちは えっと この世界では木星の衛星の名前にもなってるアナンケー叔母さんのとこで紡錘の「はずみ車」を回す仕事をしているの
細かいことは省くけど ま自分で調べてね でラケシス姐さんはそこへ来るシトびとの「転生」のくじ引き担当なの
色んなシトが来るんだけどー
転生先の選択はいろいろあって 人間とは限らないわ 猿とか 夜鶯とか ライオンとか ペリカンはないかな
そのなかで 白鳥の生涯を選んだシトの話は有名よ つまり白鳥座になったオルペウスさん でオルペウスがなんでそうなったかが重要な話なんだけどー
なにしろ週末でしょ 予定が立て込んでんのよ あ忙し
三三三
三人の魔女たちが入れ替わりに とゆうよりほぼ同時にしゃべる内容を「総合・定義」し また自然本来の分節に従って「分割」するという「2種類の手続き」を嵆は考えていた
ディアレクティケ
さっきまで窓から見えていた月は雲に隠れてしまっていた そのぶんまた星の光が強まってあのゴッホの絵のように渦巻いている
月は裸身なのだとゆう だから時々は雲に隠れるのだと
窓の外に異様に明るいものが見えた それは月ではなく 二つの 眼 であった
眼 は部屋の中に入ってきてカウンターの端に舞い降りて形になる 一匹のフクロウであった
また魔物が このバーはいったいなんなんよ
しかし 嵆はこのフクロウも女性であることは間違いないと感じていた
フクロウが喋った
はじめまして ペルセポネです
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの7
承前 バー聊斎
はじめまして ペルセポネです
フクロウは喋った
ペルセポネとおっさいますと 生と死の間を廻る大地の女神で冥界の女王ですね
と蒲さんはうなずき解説した
このいきさつはちょっと長いが 嵆さん まー聞きなさい
ペルセポネはゼウスとデメテルの娘 これを冥界の王ハデスが見初めてさらってしまうお話し アテナやアルテミスのように永遠の処女であることを誓っていたペルセポネを「ほなエロスの矢でゆわしたろかい」とハデスが画策したところから始まる お伴のニュムペたちからひとり離れて野原で水仙を摘んでいるところにハデスは黒馬で現れて強引に冥府に誘拐してしまう 『ペルセポネーの略奪』 太陽神ヘリオス(アポロン)にその事情を聞いたおかんのデメテルは激おこ ゼウスになんとかしてと頼むが ゼウスは「ハデスやったら別にえーんとちゃう」と発言 これにまたデメテルはさらに激おこぷんぷん丸してオリンポスから出て行ってもた それで困ったゼウスは「ハデス君 なんとか返したってーな」と頼んで一応は了解を得るのだが そのときペルセポネはハデスにもろた冥府の食べ物「柘榴」を食べてしまったため冥界に属さなければならなくなっていた つまりハデスのこんじょわるとゆうことだ そこでデメテルは妥協案として ペルセポネが一年のウチ半年(または三分の一)だけ冥界で過ごすとゆうことにしてもらい 結果ペルセポネはハデスに嫁ぐことになった またこのことでデメテルはペルセポネが冥界にいるときだけは豊饒の仕事をしなくなり 冬とゆう季節ができた これが四季の始まりである
二
ところでペルセポネが冥界の柘榴を食べたことを証言したのは河神の子のアスカラボス これにも怒ったデメテルはアスカラボスをフクロウに変えてしまうのである
「それはちょっと違います フクロウは実は私なんですよ 冥界の掟か何か知らないけど この躰ならどこへでも行けるとゆうことがわかったのよ でアテナの秘書とか副業でやってるわ」
「そっかー それでアテナといつも一緒の聖鳥はフクロウなのね ところで今日は何の御用事で」
「それなんだけど・・
フクロウの眼が金色に輝いた
酔郷譚 第三部 月の砂漠 しょの8 有明月亮
承前 バー聊斎
いま来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ちいでつるかな
有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし
われとこそながめなれにし山のはにそれも形見の有明の月
・
ペルセポネの二つの金色の眼が一つに合体して スターゲイトが開いたとき
嵆はまた眠りに落ちていた そして何度も夢と現の間を彷徨って 雲に隠れる月の砂漠を探していた
砂漠が美しいのは どこかに井戸を隠しているからだよ
遠くからそんな声が聞こえた
「ソクラテス博士」
「なんぢゃ パイドロス」
「さすがハカセ 打てば響きますね
なんで中国からギリシャに飛ぶの」
「サーヒンとはそうゆうものなんよ」
「嵆と彼女は結局どこ行ったのかな」
「まー 時間切れだな 今日耳日曜」
「とかゆいながらしっかり有明月亮」
「よいではないか いや朝ぼうけか」
「あンたはまだらぼけなってますよ」
「ぢゃかましー 三部作の続きは書かんぞ
「ラクタ君 新しいチャプタに入るぞ」
「はいはい えーとこないだの続き?」
「だから三部作の続きはないちゅーの」
「けっこうありますよ こけてるけど」
「シン・エルの物語とかはどうかね?」
「シン・パイドロス3みたいなもん?」
「たぶん難しいので500年ほど隠る」
「とりまイリソス川で待ってるわねん」
「もうその気になっとるやないけおま」
「どうせまたみんなあきれてますから
せめてお笑い系か下ネタ系でまとめていただいたほうがと
以下次回
田舎道
1本のIP
真夜中
・・・
・・・・
・・・・・
「ハカセ ひょっとして『起動を待ちながら』とゆうネタでは」
「あー いやその ちょっとヒプノシスの手にかかって寝オチで寝押ししてしまったんよ で大反省してんの」
「随分前もポケット内をライブ配信やった 知りませんよもう」
「だからシステムとセキュリチの再構築のため今日は予定のネタを変更してサプリメンタルだけにするかなと」
「それで1つ思いだした句がありますけど まーいいでしょう」
「反省してますってば ユルシテ卓袱台」
「あー ラクタ君 ちょっと予定変更してサプリメンタルな」
「はいはい 好きにしちくりさい で?」
「ギリシャ神話はなんべんもやったが ギリシャ哲学としてはやっとらんから ほけどこりがまたこの難しくて ソクラテスやプラトンやアリストテレスなどをまともにとりあげると大変なことになるわけよ んでやね」
「ログをほぢって手ヌキをしようとゆうわけですね」
「手ヌキ? 手ヌキか ネタ振りー してる間にー 手で逝ってくれー ♪」
「あのね ライブ配信は終わったちゅの 早く続きをやんなさい」
「ま 下記のログをサブテキストにすると まず手ヌキ いや その マヌスでツルバーレね これはディオゲネスの公開オナニーの話になるけど まー当時はこげなことが平気でおこなわれていたわけ でや もっと前の旧約聖書まで遡ると 語源になってるオナンとゆうシトがはじめたとゆわれていて ちなみに妻の名前をタマルとゆうが^^ 神様におこらえたのは ご自愛したことはともかく 外田氏は資源の無駄遣いとゆうことだったのだ またこのヂレクトリを掘るともっと面白いこともわかったので ちょっとまたやる気に納豆
かように ヨーロッパ哲学史最初の奇人中の変人ディオゲネス(BC323没)もともとは金持ち屋の息子だったが偽金作りがばれて追放されたならず者 それが一転して哲学者になるとゆう「樽の中の哲人」と呼ばれたシト まーアテネの広場での公開集団オナニーについては有名 ところが当時の才色兼備であったヘタイラーとゆう遊女達にも人気があったし アルキビアデスの情婦で名高い芸妓ラーイスに逆夜這いされたこともあるとゆう
秋深し 隣は を何する人ぞ
423456789033345678902221225+
狂宴 第一部 アテナイ篇 しょの1
・
一 一
人
=紀元前5世紀末 真夏の日中 アテナイ南郊外
マカルテスがサマリロスと出くわすところから話
は始まる サマリロスは朝早くから弁論作家リュ
シアスのところで長い時間を過ごし今出てきたば
かりでこれから城壁の外へ散歩に行く所だとゆう
・ ・
一一一一囚囚囚囚囚囚囚囚囚囚囚囚囚囚一一一一
・ ・
民人たちは朝を待つ
 ̄\
\
\
\
\
祈
___/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
___________/ ̄ ̄ ̄
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○S○ 夢のまひるに
呂 金銀の
▲M▲ 四角 三角
四角 六角
六角 無限角
恒久沙角 。。。。。。。。
・ ・
第一場
おお サマリロス
長い間お見かけできずとても心配しておった
昨夜 夢の中であなたのお書きになったヘクサメトロスを拝読して感銘を受けたところで
お話ししたいことは沢山ある
南のイリアス川のほとりにプラタナスの木があるから そこでゆっくりお話ししないかね
北にある琥珀の道 つまりエリダノス川だとパエトンが落ちてきたら困るのだよ
ホメロスとゆうほどではありません
厳密にはヘクサメトロスでもないし
貴方のように形式には拘らないから
感情と情感をそのままに内容として
感情は内に情感は外に向かうのです
サマリロスはそうはっきりと答えた
確かに形式の対義語は内容ではあるのだが
それでわ定型詩に自由はないとゆうのかな
あります それは縛られた魂が求める渇望
視覚音楽的表現の自然な結果でございます
マカルテスさまの本意はそこにあるのでわ
μῆνιν ἄ | ειδε, θε | ά, Πη | ληϊά | δεω Ἀχι | λῆος
423456789033345678902221225++
狂宴 第一部 アテナイ篇 しょの2
・
一 一
人
イリソス川を歩いて行く途中 マカルロスが「ボレアス(北風の神)」とゆう言い伝えの場所はこの辺りか尋ねると サマリテスは2から3スタディオン下流に「ボレアスの祭壇」があるので その辺りだろうと答えた
マカルロスがそうした伝承を信じるか問うと サマリテスは(アナクサゴラス デモクリトスなどの自然哲学者たちがそうしているように)「信じない」と答えて 単なる伝説化したものだろうなどと 「その寓意を現実的・合理的に解釈・説明」すれば 昨今の風潮に合うだろうと前置きしつつ そのように神話・伝承を片っ端から全て合理的に解釈していこうとするとキリが無いし 自分はデルポイの神託所の銘が命じている「自分自身を知る」ことすらいまだにできていないのだから 自分に関係の無い様々なことに考えを巡らすのは笑止千万だし そんな暇も無いので そうしたことには一切かかずらわず 一般に認められている習わしはそのまま信じることにして 自分は「自分自身に対する考察」に注力・専念するのだと答える
サマリテスさま では お願いがございます
わたくしをあなたの僕にしてくださいませぬか
マカルロスは突然立ち止まり地面にひれ伏して サマリテスの足もとにキスをした
急にどうしたのかね なにかわけがあるのか ならばここは盃を交わすのもよいのだが シトツこの提案を受け入れてもらおうか
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第二場
これは一種のテレパシーのようなエンパシーとゆう能力である
ルメリア人やネイピア人などが持っているが 実はわたしも君もこのデルタ株を既に共有しているのだ そこで肉体の器をそのままにカトラを交歓しあって それを確かめようとゆうことだ
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狂宴 第一部 アテナイ篇 しょの3
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一 一
人
2人が目的のプラタナス樹の下に到着すると サマリテスはそのプラタナスやアグノスの樹の生い茂った枝葉と花の美しさや香りの良さ 下を流れる泉のやさしい流れ 吹き抜ける風 蝉たちの歌声 寝心地の良さそうな草などを讃えつつ 付近に小さな神像・彫像が捧げられていることから ここはニュンペーたちやアケローオスがいらっしゃる神聖な土地だと指摘する
マカルロスは サマリテスの驚喜している様が地元を知らない者のようで よっぽど城壁の外に出ずアテナイの町中で過ごしてばかりいるのだろうと指摘する サマリテスは自分はものを学びたくてしょうがない男で 土地や樹木は何も教えてくれないが町の人々は何かを教えてくれるからそうしていると応じ そんな自分を外へ連れ出す秘訣を今マカルロスはこうして発見したのだと指摘しつつ お目当ての書物を読むよう促す
そしてマカルロスはリュシアスの原稿の朗読を始める
Orfeu Negro / Manha de Carnaval
Manha tao bonita manha
Na vida uma nova cancao
Cantando so teus olhos,
Teu riso, e tuas maos
Pois ha de haver um dia
Em que viras
Das cordas do meu violao
Que so teu amor procurou
Vem uma voz
Falar dos beijos
Perdidos nos labios teus
Canta o meu coracao
Alegria voltou, tao feliz
A manha deste amor
I’ll sing to the sun in the sky,
I’ll sing ‘till the sun rises high,
Carnival time is here,
Magical time of year,
And as the time draws near,
Dreams lift my heart!
I’ll sing as I play my guitar,
I’ll cling to a dream from afar,
Will love come my way,
This Carnival day,
And stay here in my heart?
Will true love come my way,
On this Carnival day,
Or will I be alone with my dream?
朝、とても美しい朝
生きる中での新しい曲
あなたの目だけ
あなたの笑い声
そしてあなたの手を歌う
あなたが廻る日があるはず
あなたの愛だけを求めていた私の弦から
あなたの唇に失われた
キスからの調べ
私の心は歌う
戻ってきた喜びを
なんという幸せ
この愛の朝に
423456789033345678902221225++++
狂宴 第一部 アテナイ篇 しょの4
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一 一
人
承前 サマリテスの提案とはバルカンのマインドメルドのようなものであった
My mind to your mind,
My thoughts to your thoughts…
そして記憶チップは融合し入れ替わった
マカルロスは35歳のソクラテスに
サマリテスは24歳のパイドロスに と
It’s been forever…
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「ヌ」
「ハカセなんぞまた降りてきましたんか」
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「・カルチアモ・」
「あンたは宇宙人でスカっ」
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「ギリシャをヒエログリフでとオモタけど
スペースが等幅表示せんのでやっぱムリ」
「はいはいどうせまたいつかやるんでしょ
とりやえず第二部をどないすんのでスカ」
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_
▲ ▼ ▲
 ̄
┏@┓ @ @ €
∋ ∈ @ ┗@┛
EARTH WIND & FIRE
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「もう10月はたそがれの国ですですけろ」
「だがあの曲はぢつわ12月の歌なのぢゃ」
「でわなぜギリシャからエヂプトに飛ぶの」
「グッポイン ま見てればわかんのちゃう」
狂宴 第二部 問答篇 しょの0 以下
アレは茗荷です>
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狂宴 第二部 問答篇 しょの1
「さてラクタ君 本題に入る前にこれはエヂプトに飛ぼうとゆう話ではないのだ たまたまでもないがエジプトにはプロティノス(205年? - 270年)とゆう哲人が居てエネアデスとゆう本を著している ソクラテスやプラトンよりも500年以上あとのシトで 思想としてはネオプラトニスムだからパルメニデスの『一』つまりト・ヘン でまたこれを1800年ほどしてツツイが『一について』をトペンするわけだ プロティノスのエロスからエクスタシスへの『一者』についてはまた論を待つが 今回は本題であるところのパイドロスをパルマコンしてみようとゆうことデR」
「ハカセ 次いかんと脱構築されるデリダ」
「それもそれでいっこのネタにはなるかも
https://www.youtube.com/watch?v=XoI1XPqXQ90
>人間は「一者」への愛(エロース)によって「一者」に回帰することができる。一者と合一し、忘我の状態に達することをエクスタシスという。[エネアデスVIの第11節] ただし、エクスタシスに至るのは、ごく稀に、少数の人間ができることである。プロティノス自身は生涯に4度ばかり体験したという。また高弟ポルフュリオスは『プロティノスの一生と彼の著作の順序について』(『プロティノス伝』と称される)の中で、自らは一度体験したと書き残している。
プロティノスの思想はプラトンのイデア論を受け継ぎながら、その二元論を克服しようとしたものである。プラトンの『パルメニデス』に説かれた「一なるもの」(ト・ヘン to hen)を重視し、語りえないものとして、これを神と同一視した。万物(霊魂、物質)は無限の存在(善のイデア)である「一者」(ト・ヘン)から流出したヌース(理性)の働きによるものである(流出説)。一者は有限の存在である万物とは別の存在で、一者自身は流出によって何ら変化・増減することはない。あたかも太陽自身は変化せず、太陽から出た光が周囲を照らすようなものである。光から遠ざかれば次第に暗くなるように、霊魂・物質にも高い・低いの差がある。
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狂宴 第二部 問答篇 しょの2
「ラクタ君 出エヂプトでもうシトツ まだ若きソクラテスが教えを請うたのがゼノンとパルメニデスなのだが マーちょっと来てみてみてみ テキストの423ページね で ゼノンゆうたらあのゼノンのパラドクスで 以前取り上げてるからあとにするけど ここではまず老パルメニデスと青年ソクラテスとの出会いの話 これはプラトン中期の『国家』や『パイドロス』のようなイデア論から後期の『ティマイオス』のような神話・宇宙論へと繋がる転機・境界作品なわけでー ソフィスト達が操る「弁論術」(レートリケー)や「論争術」(エリスティケー)とは区別された「問答法・弁証法」(ディアレクティケー)へとつながる「正統な論理的営み」の起源・系譜を描くと同時にその系譜の中にいる老パルメニデス率いるエレア派の思想・論理にも青年ソクラテスの「イデア論」にも共に後世で解決されるべき課題・問題が孕まれていたことを示唆する内容となっ
ちょっとチミ 聞いてる?」
「あー 出会い系ね」
「ぶわっかもーん しかし それはあるな」
(こほむ)
>作品中では『イデア論』の萌芽となる考えを持ちつつも未だ愛知者(哲学者)の道へと踏み込み切れていない青年ソクラテスが、ゼノンに対して自分の考えをぶつけ、その議論を引き取った老パルメニデスが、愛知(哲学)の先輩として青年ソクラテスの未熟な『イデア論』の難点を指摘しつつ、愛知者(哲学者)としての姿勢や論理的思考・検討・論証のあり方について、手ほどきをする前半部が、作品中の肝・核心となってい
ちょっとチミ わかってる?」
「あー 愛知って名古屋の話ですか」
「ぶわ ぶわっかもーん ま ゆえんのよ」
(こほむ)
でこの虚実がないまぜであるところのやね ポストモダンシュニツラー多重関節話法とゆうのが問題なのだ これは全身の関節を鳴らして会話するマザング星人の物語である 最初は指をポキポキ鳴らす程度で獲物をひっかけるくらいはできるのだが いよいよ落とす段階での決めセリフが股関節を鳴らす音を使うものであったため
ちょっとチミ そこで鼻くそほぢらないの」
「あー ナンパ術ね」
「ぶわ ぶわ ブワナー あ ライブいつだっけ紫くん
やのうて チミ ちゃんと
以下次回
https://www.youtube.com/watch?v=Sg-h4jpXsPI
・v・
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狂宴 第二部 問答篇 しょの3
「ハカセ まだ本題ではないのですか」
「ラクタ君あわてるでないぞよ
「10月1日でも遅すぎるちゅうのに」
「確かに既に黄昏の国ではある
「7月に始まって8月の狂詩曲を経て」
「あれは鍋の中の話ぢゃないの
「9月を思い出にする12月まで続く」
「また今は神無月でもあるしな
「狂詩曲は夢のあとですが関連はある」
「関連とゆえば検索していると
「ひょっとしてとグーゴルプレクスが」
「ゆえんのよ で それが一体何の関係があるのかとヂレクトリ掘るとこれがまたこの意外な関連が出るわ出るわで まとにかく今日はゼノンの話の予定だったのだがちょっと宿題がたまっているので ログで代用してまたサプリメンタルにする
以下
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狂宴 第二部 問答篇 しょの4
「ラクタ君 昨日は新月であったがその秘められた力は逆に満ちていた 本来パワーは太陽から月に流れるとゆうより月から太陽に流れるのである しかしインタラクチブにこのヒメゴト いやデキゴトは進んでいるわけだからこれでいいのだ さて本題のパイドロスの前にもう少しサプリメンタルすると プラトン中期の作品の位置づけではそのあとのテアイテトスやソピステスがある さらにティマイオスやクリスティアスに続く ここに登場するアテネのテアイテトスとは当時の優秀な数学者のひとりで 下記画像ラファエロの『アテナイの学堂』にはいないが ユークリッドに学びプラトン立体の『凸型正多面体が5つしかないこと』を証明したシトである ここでの重要な構成はソクラテスが少年テアイテトスに『知識(エピステーメー)』が何であるかを問い テアイテトスがどう答え さらにソクラテスがそれをどう評価したかがポイント そのテアイテトスの答えとは
「ハカセ エピステーメーって そんな雑誌がありましたね 安倍晴明みたいなものでしょうか」
「・・・
以下
1
テアイテトスは、幾何学や、様々な職人たちの技術に関する心得なども、それぞれに知識であると答える。ソクラテスは、そうした「○○についての知識」「○○が使う知識」といった類の具体例を列挙していくような(「外延」的な)答えを求めているのではなく、「知識」そのものが何であるかについての(「内包」的な規定・定義としての)答えを求めているのだと述べる。例えば、「泥土」が何であるかと問われて、「陶師(すえものし)が使う泥土」「竈師(かまどし)が使う泥土」「瓦師(かわらし)が使う泥土」・・・などがそれであると答えるのではなく、「土と水が混ざったもの」と答えてほしいと。
2
テアイテトスは理解し、最近友人である少年ソクラテス(参照 :『政治家』)と数学・幾何学の議論をした時にも、同類の話が出てきたと言う。それは「平方根」(二乗根)についての議論で、「3・5・6・7・・・といった面積を持つ正方形」の「一辺の長さ」は、自然数には収まらないが、こうした例は無限に出すことができてしまうので、もっと端的な表現方法を考え、まず「4・9・16・・・といった自然数の2乗(平方)として表現できる数」を「正方形数(等辺数)」と名付け、次に「それ以外」(すなわち、先の3・5・6・7・・・)を「長方形数(不等辺数)」と名付けた上で、「長方形数(不等辺数)を面積とする正方形の一辺の長さ」として、それを表現することにしたと言う。また、同様のことは立方体(すなわち「立方根」(三乗根))についても言えると述べる。
3
ソクラテスはテアイテトスを賞讃するが、テアイテトスはしかし、「知識」に関してはこのようにできそうもないと答える。ソクラテスは、「知識」が何であるかを見つけ出すのは、頂上の頂上を極める人の仕事と言えるほど困難なものであることを指摘しつつ、それを言論として把握するために粘り強くあらゆる努力を尽くして行くことを勧奨する。テアイテトスも、懸命に努力するだけはすると応じる。
4
再度ソクラテスに問われたテアイテトスはこう答える
「感覚(アイステーシス)」
「真なる思いなし(ドクサ)」
「真なる思いなし(ドクサ)に言論(ロゴス)を加えたもの」
以下次回
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狂宴 第二部 問答篇 しょの5
「ハカセ 私にはムツカシーことはようわからんのれすけろも」
「わしにもわからん てゆかー長すぎて書いてる自分がダレてきたので あと1225行ほどあるのだがテキトーに端折ろう
知識(エピステーメー)とは何であるか
・感覚(アイステーシス)
・真なる思いなし(ドクサ)
・真なる思いなし(ドクサ)に言論(ロゴス)を加えたもの
まずこの『感覚』のとこからイってみよ
>ソクラテスは、それは「あらゆるものの尺度が人間である。「ある」ものについては「ある」ということの、「あらぬ」ものについては「あらぬ」ということの。」と述べたプロタゴラスの(相対主義)説と同様であり、各人が「感覚」した通りに「あるもの(有)」が対応し、それがすなわち「知識」であると言っているのだと指摘する。テアイテトスも同意する。するとソクラテスは、そうした主張は、「何ものも、他と没交渉にそれ自体としてそれ自体に留まり、単一である、というものはない」と言っているようなものであり、大でもあれば小でもあり、重でもあれば軽でもあるといったように、単一特定の様態が1つもなく、全てのものは(常に変化し)「運動・動き」と「相互の混和」からなると言っているのだと指摘する。そしてそれゆえに、「ある」というよりは「なる」と言うのが正しいのであり、こうした考えは、プロタゴラス、ヘラクレイトス、エンペドクレス等をはじめとする(パルメニデスを除く)全ての智者と、ホメロスのような詩人たちも同一歩調を取る考え方であると指摘する。テアイテトスも
同意する。
「あーハカセ コピペで逃げましたね」
「あかんけ ぢつわこの後の考察がポイントなんやで
>ソクラテスはさらに、そうした「「有」の生成は「動」が成し、「無・亡」は「静」がもたらす」という考えの根拠として、
「熱」「火」は、「自分以外のもの」を自分から生む。
「熱」「火」自体も、「運動」「摩擦」から生まれる。
「動物」という種属そのものも「動」から発生している。
人間の「身体」は、体育で動かせば保全され、使わないと駄目になる。
人間の「精神」も、学習勉強など動あるもので保全され、何もしないと忘却する。
「無風」「凪」などの静止は腐敗・滅亡を招くが、その反対は保全の用をなす。
「天球の回転」も、万物を保全している。
ことなども挙げる。テアイテトスも同意する。
「ハカセ ひょっとして今回BGMがEWFになっていることと関係ありますんか」
「まーな 他にもある Earth Wind & Fire とはゆうが モシトツの重要エレメントはどうなったのかと思わないか
「Water ですか Wが重なってるから省略してんのかな 火と水は対極だし 地水火風だと順番も違いますね」
「通説では単に『Blood, Sweat & Tears』をマネしただけとゆわれる ところがこの『水』がいっちゃん大事なの
・
https://www.youtube.com/watch?v=uyIEi5qEywY
以下
1
承前
「プロメテウスの火は諸刃の剣でもあった 推して知るべし
では 水は何なのか
ヴェーダに依ればカーマが出現した時 無はなかった 有もなかった 時間も空間も 星々も生もなく
「ナンモ無かったんでスカー」
「ちょと待てぃ 水だけがあったとゆうことぢゃ
水は揺らぎを生じ 揺らぎは熱(タバス)を孕む そして熱は 意識を帯びる 意識は 在りたいとゆう意欲(カーマ)なのである
四大元素は生のみならず死ともかかわっている その四大元素への還元の儀式とは
火葬 風葬 水葬 土葬 である 日本では仏教伝来以前は土葬 魂が還る場所として焼却はしなかった 「殯(もがり)」の習慣である 仏教はこれに火葬による消失をいたむものとして 「哭(みね)」が行なわれた
バシュラールは 生死の儀礼に対しての想像力として
>「存在の根源を掘り下げるものであり, 存在のなかに, 原初的なものと永遠的なものとを同時に見いだそう」として働くものであり, 存在論的な変貌を刺戟するものなのである と定義した
水は 諸元素のなかでも特殊なもの 独得の内密性をもつものとされている 泉の水は生の誕生であり 川の水は流動であり 海への回帰は生と死の根源的な還流をものがたる
日常的な死はまさしく水の死である さらに 死者の眠る闇の大地から光の空へと向かう物が 水にゆだねられる樹木 これがユグドラシルのような聖樹伝説であっ
「くかー」
「寝るなっ
2
「でわもっと形而下に進めてみよう 産婆術や作用と受用の項目とか夢のような虚偽の感覚の項目はとばして 肝心のドクサについて勉強しる
「あんたがたど草 以後ドクサ くまもとさ」
「思いつきでゆうなっ 思いなしともゆうが思い込みのこと つまりドクサとはオモコである そもそもイデアとゆうのは愛知の道行きにおける問いを問い合わせる根源であって問うものの存在を含めていっさいの存在を問い返す根源そのものの示現の姿であ あーここは長いのでとばす
「オモコ(思い込み)って妄想でしょうか」
「ちょっとちゃうんとちゃう 抽象であって具体でもあるイデアの一方で プシュケ(魂)には理性と意志と欲望の三タマがあんのよ 感覚器官から入ってきた情報をナンモ考えやんと捉えてしまうものがオモコなのだ
「でわその対義語はなんなん」
「それらの情報を理性で判断した後の客観的な知識がエピステーメーである
3
「妄想とは 仏語でゆうと とらわれの心によって真実でないものを真実であると誤って考えること またその誤った考え 妄念 邪念 とゆうことになるのだが
「モーソー竹とキッコー竹みたいな?」
「シモっ ソクラテスのゆうオモコでは 真なるものと虚偽なるものがあってやね
・知っているものをオモコする
・知らないものをオモコする
のどちらかであるが もしそうだとすると 虚偽のオモコが成立するばわいとは
・ある「知っているもの」(A)を別の「知っているもの」(B)であるとオモコ
・ある「知らないもの」(C)を別の「知らないもの」(D)であるとオモコ
・ある「知っているもの」(A)を別の「知らないもの」(D)であるとオモコ
・ある「知らないもの」(C)を別の「知っているもの」(B)であるとオモコ
このいずれかであるとゆうこと
「あのー もっとわかりやすくならんですかね
以下次回
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狂宴 第二部 問答篇 しょの6.2
「ハカセ 次の予定は」
「ナンモ 考えてない」
「ナワケ ないでしょ」
「ナモン 知らんてば」
「上カラ読ンデモ 脱虚脱 モデン読ラカ下」
産もほぞと夜半にSもて令和奇奇
われてもすゑに逢はんとぞ思ふ
長き夜のとをの眠りの君目覚め
神酒乗り船の音のよき哉
星路見ゆ漕ぎて不知火闇の華の
雅び濡らして聞こゆ満ち潮
汝が月が多残る夜空か本木なき
輩ぞ寄るこの誰垣内かな
薔薇園は黙して言はで小宇宙
失せては出でし雲端の空は
呼ぶよ君平安愛へ未来呼ぶよ
真剣さ老いこの恋を散見し
今の以後千年念ぜ恋の舞
最上川 素直さを成す 我が身かも
最上川 気づかぬか月 我が身かも
最上川 川の音の輪が 我が身かも
五月雨を 探してし風 折れた身さ
五月雨を 避ける夜今朝 折れた身さ
五月雨を 問ふる夜ふと 折れた身さ
杞憂の酒 偽るはつい 今朝の雪
黄泉と化し 予知夢の鞭よ しかと見よ
君ならば 絆頷き 薔薇並木
狂宴 第三部 三つの聖痕篇 しょの予告
温泉隧道
K野崎の風呂は迷宮であった 外湯巡りを一通りすませたあと 「自分」はひとり三木屋に戻ってもう一度しまい湯を使うことにした
そこに沈む自分はルシウスとなって西暦132年の古代ローマのテルマエに飛ぶだろうと思った
ぶくぶくぶく
以下次回

