Kalcha's Papier colle avec le texte

地図と記号 続編
第二部 第5章
科学法則は時間の前向きと後ろ向きを区別しない しかし前編で矢は5本と書いたが少なくとも3種類の時間の矢があって未来と過去を区別している その3つの矢とは 無秩序の増大する方向すなわち熱力学的な時間の矢と 我々が未来ではなく過去を覚えている方向の心理的な時間の矢と 宇宙が収縮ではなく膨張していく宇宙論的な時間の矢である
カーセルダイン駅西口のバスターミナルから1ブロックほど行くと右側にクロックコーナーとゆうタイ料理レストランやネイルサロンや歯科医院も入っているショッピングセンターがある アダルトショップまである しかし目的地はそこではない そこには通りを歩いて行けばいいのだが手前のバスターミナル横のパーキングエリアから近道があるのだ それは小さな森の公園で真ん中を小径が通じている しかし待て Kはまだ一度もここを訪れたことがないのだぞ この街を何故覚えているのか
心理学的な時間の矢は熱力学的な時間の矢と同じでこの2本は常に同じ向きである まだよくわかっていない人間の脳をコンピュータに置き換えると0と1は無秩序と秩序であって その記憶装置は2つの状態のいずれかをとれる素子を含む装置である コンピュータの記憶装置はエネルギーを使うので それは結局秩序の維持に無秩序を増大させる時間の方向であり 我々の主観的な時間の方向である心理学的な時間の矢も 脳内部でも熱力学的な時間の矢で決定されるのはエントロピーが増大する順序で物事を記憶するからなのである
夜の九時に初老のKがホイールに独りで乗ろうとするのは係員が訝しむところだ だから猫を誘ったのだが伝播は届かず結局独りで乗ることになった かくてリスの檻は勝手にどんどん昇る てっぺんだ 今度はどんどん降る どすん この糸車が回る運命だとしても今日はまだ土曜日であり 市場に意図を買いに行くのはまだだ そもそもこの話は前編とは違って水曜日に始まっている 水曜日にまず友人が来たのだ こういった符合はこの土曜日がお喋りばかりになったことも表しているではないか そして日曜日が来てそれはうまくいかなかった
テーブルからコップが落ちて割れたとする 割れたコップが独りでに集まってテーブルに戻るとゆうようなビデヨを見ることがあるが そうゆうことは実際には起こらない 熱力学第二法則で禁じられているからである 秩序のあるコップは過去にあり無秩序の割れたコップは未来にある どんな閉じた系の中であっても無秩序あるいはエントロピーは時間とともに増大するのはゆわば経験法則であって 物事は常に悪い方向に向かうのだ 熱力学の第二法則は無秩序は常に秩序状態よりも多いとゆう事実に基づく 例えば 箱の中に入っているジグソーパズルは完成配置は1つしかないが ばらばらの無秩序状態は無限にある 最初の秩序状態から箱を揺さぶればどんどん無秩序状態が時間と共に増大していくとゆうわけだ
しかしKは通りを歩かずに森の小径を近道した Kは陶然とした気分に浸りながらも一つ一つの印象をしっかりと意識に刻みつけながら歩いた 森を抜けたところのY字路でさらに正確な選択肢を見つける さていよいよそこからわずかに曲がって続く袋小路の突き当たりの少し手前に目的の場所がある ハインリヒであればここで母の声に目覚めるところであるが
これは夢オチではない
ああ ぼくはいまドアベルを鳴らそうとしている
この記憶は未来の記憶なのか